2007/05/28

[直島] 地中美術館、所感 このエントリーを含むはてなブックマーク

地中美術館。今回はこれが楽しみだった。
「モネの睡蓮があるらしい」てことと、「タレルの作品がヤバいらしい」
てこと以外はほとんど前知識無しで見に行ったのだけど、
もう、完全に圧倒されて、ノックアウトされちゃいました。

美術館自体は一連の「ベネッセハウス」とは別枠で、
「同じ島でベネッセがやってる別の美術館」という感じ。
美術館へはbenesseがやっている無料のシャトルバスで向かった。

チケット窓口で簡単な説明を聞く。
ん?入場料2000円??

たけ〜〜


まあ、しょうがないかと思いながら、坂を上って美術館へと向かう。
チケット窓口と美術館は完全に離れたところにあって、
途中に安藤忠雄には似つかわしくないガーデニングを発見。
まあ、そういうのも含めた一連の作品なのかと思っていると
窓口でもらった冊子に「モネの睡蓮の池を再現」と書いてある。
むむむ、、、すげえ。

そして美術館へ。

展示作品はそれほど多くなく、規模はこじんまり。
でも中に入るとスペックだけで表されるすべてを否定される感じでした。

展示会場に至るまでの全ての道のり、空間ごとに明暗反転がパッツリとして、
暗い道を歩いていたと思うと前方に光が差す壁。
それを曲がると一気に明るくなる眼前。そしてまた暗転。
空間のコントロール、操作、そういったものが完全にそこで行なわれる。
前述の冊子を見ても、安藤の建物は「所蔵作品」として扱われている。
「芸術作品」をおさめるだけのハコとしての建築ではなくて、
感覚や意思までコントロールするその建築は圧倒的。

幾何学的な安藤建築そのもののようであって、
他の美術館とは明らかに違う。
兵庫県立美術館大山崎山荘美術館新館狭山池博物館
ベネッセミュージアム西宮市貝類館
安藤忠雄の建てた美術館はそれなりに見てみたけど、全然どれとも相容れない。

圧倒的。

なるほど、こうなると2000円とかするかもしれんなあ、と
いわゆる「所蔵作品」を見てもいない内から感心することしきり。
ちなみにカメラ持ち込み禁止だったのだけど、
これほっといたらフィルム3本くらいは一瞬だろうな。

ウォルター・デ・マリア、ジェームス・タレル、クロード・モネ。
それらの所蔵作品もそれぞれにすばらしかった。

気になったのは、モネの睡蓮ってどうしてこんなに人気なのかということ。
印象派の作品として確かに圧倒的な感じがあったり、
描写自体確かに「ふぁ〜、すげえなあ」と感動的なんだけど、
大山崎山荘、大原美術館、そして直島(他にもあると思うけど)と
日本のいろんなところで見かける訳です。
モネが作った日本庭園の絵画だから、ということかもしれないけれど、
なんで「モネ=睡蓮」なのかは気になるところ。

しかし、ここの美術館の睡蓮は別格。
部屋の上部から入ってくる光、前室のベンチから見える作品、
あくまでも睡蓮が前面に押し出されているのに、
それを借景のように見せている感じ、、、まいった。

タレルについては、妹の反応が一番わかりやすかった。
絵画教室に通って水彩や油絵を描いてたこともあるけど、
現代芸術とかの類いには差して興味無いと思っていた妹。
実際にミュージアムの方では「なんかようわからん」といってたのに、
タレルを見たときの反応は「おもしろい」「すごい」を連発。
この感じ、どこかで見たことがあると思ったら、
サントリーミュージアムでやってた「ドラえもん展」に似てる。

出品しているのはどれも著名な現代の作家さんばかり。
でも客層の大半はモダンアートとか別に、、、な家族連れやカップルばかり。
それでも「ドラちゃんかわいい」とか「すご〜い」という声ばかり。
森村泰昌がいっていた「装置の完成度が高いこと」は、
「思想の完成度が高いこと」を遥かに凌駕してしまう。
もちろん、思想の完成度が低いとそこまでのインパクトは無い訳で、
タレルが実際にどういう思想のもとで造形しているかということは
もうここまで来るとそんなに重要じゃないんじゃないかと思ったりする。

いや、もちろんそれも含めてタレルの作品てのがあるんだけど、
「なんだか良くわからないけど、直島はすごかった」
というだけでも芸術ってすごく価値のあることなんじゃないだろうか。
僕自身は「芸術」って美術館にあるものじゃなくて、
人の礼節や所作、生活の隅々に「美しいもの」ってのはあると思うのだけど
それとは別に「美術館」というものができることというか、
「お金を払って芸術を見に行くということ」を
すごく端的に表現しているような、そんな気がしたのです。
そうなると、2000円の入場料もなんだかすごく納得がいく。
映画が1800円、甲子園の1塁アルプスが2500円。
だとしたら美術館が2000円でも、まあ、そんなもんかなあ、と。
もちろんどれももっと安いにこしたことは無い訳だけど。

大阪に戻って、友人のcoppeさんに
「初めて安藤すごいと思いました」とつたえると、
「おれも同じこと思ったわ」と。

地中美術館。入館料¥2000
今まで見た安藤氏の建物の中で一番鋭い。
コンクリートの洞窟を、暗い迷路を探検家気分。
展示室に入った途端、ぱっと目の前が開ける。
光が降り注ぐ。
「ああ神様!」ってきっとこんな気分。
空間はこんなにも劇的に芸術的に構成することができるんですね!
@kyoto:地中美術館(直島)


いや〜、行く価値有り。
文句無しの2000円でした(くどい)

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