2007/05/01

[映画] BABEL このエントリーを含むはてなブックマーク

昨日は映画を見に行きました。
家計にゆとりが無いのと、奥様が妊娠中でタバコの煙がだめなので、
近頃めっきりライブとかを見に行かなくなったので、
娯楽といえばめっきり映画です。

新しく出来たパークスシネマで、ナイトショー。
20:00以降の上映は1200円で見れるので嬉しい。
最近はネットでの座席予約と、ナイトショーの割引が一般的みたいで
2本分の値段で3本見れるのだからありがたい。
まあ、それも子供が生まれるまでのはなしだな。

で、バベル。
菊池凛子のアカデミーノミネートで話題になった映画。
モロッコ、メキシコ、日本、それぞれ別の場所で繋がって行くひとつの物語。
詳しくはこちら
映画『バベル』4月28日公開 公式HP



で、yahoo映画のレビューは最悪。
「金返せ」「気持ち悪い」「よくわからない」

いや、これ本当にそんなにひどい映画なんだろうか。
だとしたら、なぜカンヌで監督賞を取り、
15分ものスタンディングオベーションを得ることが出来るのだろうか。
で、僕と奥様の最初の感想としては、
「さすがにアカデミー賞は取れないよねえ」ってところで一致。
アメリカ向けではない気がする。ブラッドピットを見たい人にも不向き。
人間の根底の、本当の意味での「ドラマ」だなあと思う。

奥様が言っていた、どこかのコメント、
「結局みんなキスされたい(愛されたい)んでしょ」というのが、
すごく端的で的確に映画の核心を捉えてるような、そんな気がした。
映画の中の出来事はどれも端的で明確には説明されていなくて、
それは「映画的」であるというより「現実的」な出来事のような気がする。
つまり、現実におこっていること、おこることを丁寧にトレースして、
それを理不尽なくらい暴力的にまとめあげることで、
映画の中の話が極端なリアリティをもってしまう。

僕が強く感じたことは、
「世の中はとても理不尽で、僕らは本当に理解し合うことは出来ない」
という、村上春樹の小説の根底に横たわっているそんな感情でした。

物語はほんの小さなすれ違いから生まれて、
それが誰も望んでいない結果を生んで行ったりしている。
映画の中の登場人物は、だれも「不幸になること」を望んでいない。
「悪い人」は誰もいなくて、みんな心の底から「幸せであること」を望んでいる。
なのに、物事は少しずつねじれて行く。
そのきっかけは、愛することが、ほんの一瞬途切れているから、だったりする。
ああ、世の中ってそうだよなあ、と。

モロッコを旅したのはいまから9年ほど前のこと。
そのときの風景や景色、感情や意識がフラッシュバックして、
それに加えて「父親」の視点や「母親」の視点、
「アメリカ人旅行客」を演じきったブラッドピットはすばらしく、
今まで見た中でも最高なんじゃないだろうかと思ったりしました。


いろんなテーマや、いろんなイベントがほんとうに盛りだくさんで、
これは「映画好き」の高校生がデートで見に行っても全然楽しめないだろうなと思う。
どっちかというと理不尽なフランス映画好きとか、
結婚して子供が出来て、生きることの意味を考えたりとか、
いろんな国を旅して「アメリカ人旅行客」をみて辟易したり、
そういう人にはすごくいろいろ楽しめるんじゃないかなあと思うのです。
改めて挙げてみると全部当てはまるなあ、、、。

で、さっき言った「本当に理解し合うことは出来ない」ってのは、
中学生でノルウェイの森を読んだときとか、
高校生ですごくダメージの残る失恋をしたとか、
そういうときから僕の中にずっとのこっている感覚。

結婚して、本当に理解し合うことの出来る関係を築いて行くパートナーが出来たのだけど、
奥様の妊娠と言う体験を通じて、やっぱり「理解し合うこと」は難しいなあと実感。
いや、理解し合えるか、し合えないかはあまり重要じゃなくて、
「理解し合えない」からこそ一緒に生きて行く意味があるのだし、
人生は深みを増して行くものなんだと最近はすごく思う。

でもこの映画の中にあったのは、そういった小さなすれ違いの中で
優しさや愛情という形の無い、それでいてとても大切なものが、
すこし形を変えてしまった瞬間に全ての悲劇が起こってしまっている。
その具合が、テレビやハリウッドのパッケージされた「幸福」ではなくて、
だからこそ真実みがあるというか、作品の重みが増すというか。



いつも思っていることをそのまま書き出すと、
まとまりが無くだらだら長くなってしまうなあ。
元に戻そうとしても結局同じように長く、、、

そう。
みんなすごく愛されたいんだなあ、と。
そういう意味でもラストシーンはすごく象徴的。
世の中の出来事の大半は、理不尽で説明不可で、そして暴力的。
登場人物はみんな一様にすこしずつ語られない陰を抱えていて、
すごく単純に幸せであることを望んでいて、
そしてそれ以上に「誰かに愛されたい」と願っている。
いろんな事情や、前提や、バランスみたいなもので
それをおおっぴらにすることはすごくはばかられたりするんだけど、
「ややこしいことは抜きにして、さっさと愛し合おうぜ」と
単純にそれだけなんじゃないかなあと思う。

そういうかんじが、物語にリアリティを生んでいるように感じます。

細かく挙げて行くと、本当にきりがないのだけど、
ひとつひとつのシーンや、台詞、表情、そういう全てが細かくリアルに絡まっている。
共感できるシーンが多いほど、面白みが増して行く、そんな映画。


やっぱり結局何が言いたいのか、まとまらないなあ。
わかります?なんとなくでも。

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